「お気に入りは、白地に水色の帯。6月、水が恋しくなった頃からお茶会に行くのによく使いました。」
奥さまは帯にまつわる思い出をお話しくださいました。
となりの丸の柄の並んだ洒落た帯は、お月見の会に。
左の唐織はお若い頃のもの。
金とオレンジのチェックは、お嬢様の入学式や卒業式にお使いになられたそうです。
雲肌の越前鳥の子をベースに、赤と緑を基調にした帯で対角に縁(へり)を取り、画面を引き締めます。
全体を見たとき、右側から見たとき、左側から見たとき、
それぞれを意識して帯の種類や、デザイン、色合いやリズムを考え配置を決め
裏打ちを施し、裁断したところの糸がほつれぬよう和紙で包む覆輪(ふくりん)を廻します。
赤みを帯びた透明感のある漆塗りの椽(ふち)に遠州透かしの本金金物をアクセントに。
お茶会、謡曲の会、お嬢さんの入学式や卒業式。
ハレの日の奥さまを彩ってきた帯を、屏風に残しておきたいとご依頼いただきました。
後々までお座敷を飾られる屏風とともに
お嬢さんはご自分の入学式のときのお母さまの美しい姿を思い出され、
お孫さんは優しいお婆さまを
曽孫さんはお嬢さんやお孫さんから、素敵な曽祖母さまの話をお聞きになることでしょう。
ありがとうございました。