
雲間の深い闇の奥ゆき。
闇からのぞく胴体のうねり。
もくもくと湧きたつ雲の立体感。
風のうごきを感じさせるひげの躍動感。
深い彫り、眉間のしわと鋭い眼光。
眼下の敵に堂々と対峙する龍が勇壮に描かれています。
屏風は1隻(せき)2隻と数え、
左隻右隻の2隻がペアとなり1双(そう)と呼ばれます。
威嚇する虎でご紹介した左隻の虎図屏風の右隻には
こちらの龍が対峙していました。
さて、この屏風を平たく広げてみると

やはり間延びして、龍が可愛らしく、滑稽にさえ見えます。
この龍図屏風は、虎図が私の手元に来る前に離ればなれになり
海外の日本美術愛好家のもとへ渡り、写真が残るばかりです。
虎も龍もライバルを失い、こころなしか寂しそうな表情に見えるのは気のせいでしょうか。