江戸時代の本間6曲『虎図屏風』です。
踏ん張った後ろ脚の力強さ。
腰や肩の筋肉の隆々とした盛り上がり。
尻尾の躍動感。
右上方に照準を合わせた鋭い視線。
胴体全体がにバネのように力を溜め
今にも敵に飛び掛かろうとしている虎の姿がダイナミックに描かれています。
さて、この屏風を平く広げてみると
後ろ脚は伸びきって踏ん張りが効かず
腰と肩の筋肉は盛り上がりを失い
尻尾も動きが止まっています。
視線は前方に移り、
胴体は痩せ細って全体に間延びしているように見えます。
2頭の虎を比べてみると、
この屏風は、M字型にしつらえたときに生み出す物理的な遠近感と
正面から見たときに各6面が斜めに見えるという特性を活かして描かれているのが分かります。
屏風に描く事が珍しい事でなかったこの時代の画家だからこそ
間延びした虎を力強い猛虎に変えるマジックを使う事ができたのでしょう。