BLOG/威嚇する虎

江戸時代の本間6曲『虎図屏風』です。

踏ん張った後ろ脚の力強さ。

腰や肩の筋肉の隆々とした盛り上がり。

尻尾の躍動感。

右上方に照準を合わせた鋭い視線。

胴体全体がにバネのように力を溜め

今にも敵に飛び掛かろうとしている虎の姿がダイナミックに描かれています。

さて、この屏風を平く広げてみると

後ろ脚は伸びきって踏ん張りが効かず

腰と肩の筋肉は盛り上がりを失い

尻尾も動きが止まっています。

視線は前方に移り、

胴体は痩せ細って全体に間延びしているように見えます。

2頭の虎を比べてみると、

この屏風は、M字型にしつらえたときに生み出す物理的な遠近感と

正面から見たときに各6面が斜めに見えるという特性を活かして描かれているのが分かります。

屏風に描く事が珍しい事でなかったこの時代の画家だからこそ

間延びした虎を力強い猛虎に変えるマジックを使う事ができたのでしょう。

BLOG/いまどこ 卯月

BLOG/対峙する龍

関連記事

  1. BLOG/カラスにえさをやる人

    さあ、パンでもお食べ。「ぎょうさん撒いてくれんるで…

  2. BLOG/タイムカプセル 小野田清吉くん

    小野田清吉くん、か。岩手県の地理を勉強しているので、東北の…

  3. “I’m hinge”

    “I’m hinge”「私が蝶番です。」デザイナーの山崎正人さんが…

  4. BLOG/戦禍を逃れた小袖

    「空襲で全てが焼け、残ったのはこの小袖だけなんです。」戦禍を逃れた…

  5. BLOG/東寺の縁日

    京都の東寺では毎月21日に市が開かれ「弘法さん」と呼ばれ多…

  6. BLOG/京手描友禅 on petit 屏風

    過日京都手描友禅協同組合青年会さんの講習会にご招待いただきました。…

  7. BLOG/対峙する龍

    雲間の深い闇の奥ゆき。闇からのぞく胴体のうねり。も…

  8. BLOG/思い出の帯 本間四曲帯地貼交屏風

    「お気に入りは、白地に水色の帯。6月、水が恋しくなった頃からお茶会に行くの…

最近の記事

PAGE TOP