屏風の修復をご依頼いただきました。
縁を外すと明治25年4月23日と書かれてあります。
「表具師 井ノ口精三郎作」、私たちの大先輩でいらっしゃる。
といっても存じ上げないし、今はもうお店も無い。
作品に名前を残すなんて、
よほど腕に自信と、仕事への責任、職人としての誇りを持っておられたんですね〜
なるほど、手間のかかるお仕事だこと。
表具に使われた裂地(きれじ 布地)をパッチワークのように張り交ぜ(はりまぜ)して、利休屏風に仕立ててあります。
当時は表具専用の裂地が織り出されたころで、あまり普及してなかったのか
ここに張ってあるのは、帯や着物、法衣などを解いた裂地、江戸時代のものもあるようです。
捲ると下張りには、これまた江戸時代の書類が張ってあります。
「肴通」
でも、129年の月日、
何箇所か裂地が欠損し、あちこちに虫食いと、咳き込むくらいの埃です。
食パンをおろし金でまぶして、掌で優しく撫でパンに吸わせるように埃を取り除き
裂地の欠損したところを、同じ時代の布で埋めていきます。
大先輩の自信作。
また100年持ち堪えるように、及ばずながら僕も自信と責任と誇りを持って、修復します。
でも、誇り、いえ、埃だけは綺麗に落としておきますね。