BLOG/自信と責任と誇り

屏風の修復をご依頼いただきました。

縁を外すと明治25年4月23日と書かれてあります。

「表具師 井ノ口精三郎作」、私たちの大先輩でいらっしゃる。 

といっても存じ上げないし、今はもうお店も無い。

作品に名前を残すなんて、

よほど腕に自信と、仕事への責任、職人としての誇りを持っておられたんですね〜

なるほど、手間のかかるお仕事だこと。

表具に使われた裂地(きれじ 布地)をパッチワークのように張り交ぜ(はりまぜ)して、利休屏風に仕立ててあります。

当時は表具専用の裂地が織り出されたころで、あまり普及してなかったのか

ここに張ってあるのは、帯や着物、法衣などを解いた裂地、江戸時代のものもあるようです。

捲ると下張りには、これまた江戸時代の書類が張ってあります。

「肴通」

でも、129年の月日、

何箇所か裂地が欠損し、あちこちに虫食いと、咳き込むくらいの埃です。

食パンをおろし金でまぶして、掌で優しく撫でパンに吸わせるように埃を取り除き

裂地の欠損したところを、同じ時代の布で埋めていきます。

大先輩の自信作。

また100年持ち堪えるように、及ばずながら僕も自信と責任と誇りを持って、修復します。 

でも、誇り、いえ、埃だけは綺麗に落としておきますね。  

BLOG/新時代の工芸2021

BLOG / 門

関連記事

  1. BLOG/書×タイシルク×屏風

    米国人のJIM THOMPSONが育てあげた手織りのタイシルクは、…

  2. BLOG/タイムカプセル

    日本古来の和釘。墨で書かれた印。使…

  3. BLOG/別れた2人からの相談

    「戊申(つちのえ さる)」115年前のカップル。どこへ行く…

  4. BLOG/いまどこ 葉月

    季節をかざるpetit床の間 いまどこ葉月は、かずみさんの…

  5. BLOG/和綴じ本

    古い絞りの着物「春 」「夏」「 秋 」「冬」「 心」…

  6. BLOG/いまどこ 皐月

    季節をかざるプチ床の間 いまどこ。皐月の床かざりは、大将人形の「か…

  7. BLOG/京表具教室 茶掛 短冊台表具

    昨年春から始めた京表具教室。コロナ騒動で、4人のモニタークラスのみ…

  8. BLOG/算数

    (「お客様の書作品」+ 「水彩の図案」+「…

PAGE TOP